第48回九州芸術祭文学賞 地区優秀作11編が決定

平成29年度(第48回)九州芸術祭文学賞の地区入賞作が決定した。
応募総数は253編。九州8県と3政令指定都市の11地区でそれぞれ地区選考を行い、地区優秀作11編と次席11編を選んだ。

第48回九州芸術祭文学賞地区優秀作・次席

地区優秀作の11編を対象に、作家の五木寛之、村田喜代子、又吉栄喜、「文學界」編集長の武藤旬の4氏による最終選考会(東京)で最優秀作が決定する。発表は1月末予定。

9月9日(土)九州芸術祭文学カフェin沖縄を開催

(公財)九州文化協会は9月9日、浦添市のてだこホールで九州芸術祭 「文学カフェin沖縄」を開催します。さんが「原風景から小説へ・・・足元を見つめる・・・」と題して参加者たちと語り合います。

日時・申し込みの詳細はこちら

 

文学カフェin沖縄 [ PDF ]

日時 2017年9月9日(土)2時~4時(1時30分開場)
会場 浦添市てだこホール(1-9-3沖縄県浦添市仲間1-9-3)
定員 30名 ※事前のお申し込みが必要となります。
入場 無料

♦お申込み♦
往復ハガキ、またはメールで名前、住所、連絡先の電話を記載してお申し込みください(8月10日必着)。折り返し整理番号を返信致します。定員を超えた場合は抽選になります。

〒900-8570 沖縄県那覇市泉崎1-2-2
沖縄県文化振興課 文学カフェin沖縄担当 宛て

●主催 (公財)九州文化協会、沖縄県、佐賀県、福岡県、大分県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、福岡市、北九州市、熊本市
●共催 沖縄県文化協会、西日本新聞社、福岡文化連盟

又吉栄喜さん

1947年、沖縄・浦添村(現浦添市)生まれ。琉球大学法文学部史学科卒業。1975年、「海は蒼く」で新沖縄文学賞佳作。1976年、「カーニバル闘牛大会」で琉球新報短篇小説賞受賞。1977年、「ジョージが射殺した猪」で九州芸術祭文学賞最優秀賞受賞。1980年、『ギンネム屋敷』ですばる文学賞受賞。1996年、『豚の報い』で第114回芥川賞受賞。著書に『豚の報い』『果報は海から』『波の上のマリア』『海の微睡み』『呼び寄せる島』『漁師と歌姫』など。南日本文学賞、琉球新報短篇小説賞、新沖縄文学賞、九州芸術祭文学賞などの選考委員を務める。2015年に初のエッセイ集『時空超えた沖縄』を刊行。  原風景・・・足下を掘った作品が世界でも読まれている。

翻訳作品 フランス、イタリア、アメリカ、中国、韓国、ポーランド等

「人骨展示館」「果報は海から」「豚の報い」「ギンネム屋敷」等

映画化作品 「豚の報い」崔洋一監督、

「波の上のマリア」宮本亜門監督「ビート」原作

7月29日(土)九州芸術祭<文学カフェin熊本シティ>を開催

(公財)九州文化協会は7月29日、熊本市のウェルパルくまもとで九州芸術祭 「文学カフェin熊本シティ」を開催します。伊藤比呂美さんが「わたしはどうやって何を書くか」と題して語り、参加者への創作指導もいたします。

日時・申し込みの詳細はこちら

 

日時 2017年7月29(土)1時~3時(12時30分開場)
会場 ウェルパルくまもと(熊本市中央区大江5丁目1-1)
定員 30名 ※事前のお申し込みが必要となります。
入場 無料

♦お申込み♦
官製はがきにて名前、住所、連絡先の電話を記載してお申し込みください(6月末必着)。定員を超えた場合は抽選になります。当選者には折り返し案内文を送ります。

〒860-8601 熊本市経済観光局
文化・スポーツ交流部 文化振興課 宛て

 

●主催 (公財)九州文化協会、熊本市、佐賀県、福岡県、大分県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県、福岡市、北九州市、熊本市
●共催 熊本文化協会、西日本新聞社、福岡文化連盟

伊藤比呂美さん
1955年、東京都生まれ。78年、『草木の空』でデビュー。80年代の女性詩ブームをリードする。97年に渡米した後、熊本に住む両親の遠距離介護を続けていた。99年、『ラニーニャ』で野間文芸新人賞、2006年、『河原荒草』で高見順賞、07年、『とげ抜き新巣鴨地蔵縁起』で萩原朔太郎賞、08年、紫式部文学賞を受賞。15年、坪内逍遙大賞を受賞。 著書に「良いおっぱい 悪いおっぱい〔完全版〕」『女の絶望』『読み解き「般若心経」』『犬心』『先生!どうやって死んだらいいですか?』(山折哲雄氏)との近著)近著に、『切腹考』がある。

第48回九州芸術祭文学賞、作品を募集

第48回九   第48回九州芸術祭文学賞の作品を募集します。応募資格は九州・沖縄在住  者であること。400字詰め原稿用紙で55枚~60枚の未発表作品が対象です(パ  ソコン打ちも可)。締め切りは8月31日。最優秀作には賞金30万円と副賞「青木秀賞」(20万円)が贈られ、作品は『文學界』4月号(文藝春秋刊)に掲載されます。最終選考委員は、作家の五木寛之、村田喜代子、又吉栄喜の各氏と『文學界』の武藤旬編集長。問い合わせや既刊の作品集(1,000円)の購読希望は(公財)九州文化協会=電話092(406)8581。詳細は応募要項をご覧ください。

 

第48回九州芸術祭文学賞募集要項

 

 

いま漱石に学ぶ意義「透徹した文明論」 姜尚中さん講演 九州芸術祭文学賞表彰式

第47回九州芸術祭文学賞(九州文化協会など主催、西日本新聞社など後援)の表彰式が3月11日、北九州市で開かれ、政治学者で熊本県立劇場館長の姜尚中(カンサンジュン)さんが「漱石のことば」と題して記念講演を行った=写真。同題の著書もある姜さんは「夏目漱石は4年ほど熊本にいたのに、1年しかいなかった松山市との関わりが全国的に知られている。漱石を松山から奪還するミッションが僕に下っている」と話し、会場を沸かせながら、漱石作品と熊本との関わりや独自性などを語った。
姜さんは、漱石の自筆資料を見たり、漱石の滞在先を巡ったりした経験から「火宅の人とは正反対。生活は実直で、ある意味では私たちに近い人」と推察する。その上で「三四郎」「二百十日」「草枕」など熊本ゆかりの作品を挙げ、「内面に孤独を抱えた者が、どんな人間関係をつくるか。法律以上に大きく影響する『世間』とは何なのか。近代日本を生きる人の生活から、国の仕組みまでもあぶり出す」と漱石の功績を語った。
また熊本と、留学先のロンドンという、漱石にとっての“異郷生活”を深く考察する必要を語る。「現代の『グローバルか反グローバルか』と同じように、明治も『欧米万歳か国粋主義か』のせめぎ合いの岐路だった」とした上で、「漱石は英語、日本語、漢語の世界を知っており、どの世界にも惑溺(わくでき)せず、内面に葛藤を抱え込んだ。だからこそ透徹した文明論を書けた」とみる。
この日は東日本大震災から丸6年がたった日。「あれから社会は変わらなくてはいけないと戦慄(せんりつ)したはず。男と女がおり、家族があり、その先に世間がある。漱石に学ぶものは多い」と作品を読み直す意味を語りかけた。(大矢和世=

姜尚中さん

西日本新聞文化部)

第47回九州芸術祭文学賞を受賞して  尾形牛馬

受賞の喜びを語る尾形さん

妻の死、大地震、そして受賞

その日の夕方、朝からかたくなに沈黙を続けていた家の電話のベルが鳴った。「おめでとうございます。九州芸術祭文学賞の最優秀賞に決まりました」。打率2割2分の野球選手がまぐれでホームランを打ったようなものである。家の中を走り回りたいほどうれしかった。しかし私は精いっぱい落ち着いたふりをして答えた。「はい、分かりました。ありがとうございます」。大根役者の見え見えの下手な演技。見破られていたに違いない。
思えば、この小説ができ上がるまでの間に二つの大きな出来事があった。一つは苦楽を共にしてきた妻の死、もう一つは地元熊本の大地震である。
妻は健康で元気な頃、こう言っていた。
「私はね。死そのものはそんなに怖くはなかとだけど、その先にある永遠という時間を考えると、身の毛がよだつほど恐ろしかとよ」
私もこう言った。
「オレもそうだよ。死後の永遠という時間を考えると、恐ろしくて身震いがするとだよ」
その妻が進行性のがんにかかって、一昨年の末、身の毛がよだつ程恐ろしい、永遠という時間の中に旅立ってしまった。
もう一つは大地震である。4月14日の夜9時過ぎ、震源地、熊本県益城町近辺にある私の家はガタガタミシミシ、縦に横にと揺れ、命の危険を感じた私は、家を飛び出して避難所になっているH中学校の方向に向かって逃げた。逃げる途中も道路が揺れるので、ゆらゆら揺れながら逃げた。地面も人も電柱も空も揺れていた。
H中学校の運動場には100人を超える人たちが避難していて、大きな揺れがくる度に、地面の底からわいてくるような、異様な人の悲鳴が上がった。灯のない真っ暗な夜の闇。きらきら光っている満天の星。恐怖におびえるわれら人間。非情にも大地の揺れは止まらなかった。
日付が16日になったばかりの深夜、揺れが止まってほっとしているところに、もう一つもっとでかいのが襲った。
私の小説はこんな出来事を経てでき上がった。
ところで、私は酒を飲み出すと止まらないアルコール依存症者である。依存症満開の頃、暴言、暴力、事故、事件、人様にはとても口にできないようなことを次から次へとやらかしてきた。16年前、2度目の精神科病院への入退院後、別居していた妻のアパートで生活を始め、酒を飲む代わりに小説を書き始めた。
自分には才能がないのは分かっているので、どんな下手な小説でも良いから一つだけでも書き上げたい。登場人物がいて、筋があって、せりふがあって、始めと終わりがあって、あまり誤字のないものを。書き終えたら、その原稿用紙を重ねて、手で感触を確かめたり、近くから見たり、遠くから眺めたりしてみたい。そんな気持ちであった。
以来16年、酒を飲まずに下手な小説を書き続けている。
そんな自分が賞をもらうなんて夢のようだ。

おがた・ぎゅうま 1942年熊本市生まれ。早稲田大卒。同大在学中に同人誌「新人文学」同人。同市内の高校で英語教諭として勤務。アルコール依存症を患い、精神科病院に2度入院した。2007年、依存症の体験を基にした小説集「窓の葉書」を自費出版した。同市東区在住。写真は11日、北九州市であった授賞式で。

◇受賞作「酒のかなたへ」は発売中の文学界4月号に掲載されている。

第47回九州芸術祭文学賞表彰式

尾形さん「勇気持って書けた」

第47回九州芸術祭文学賞(九州文化協会など主催、西日本新聞社など後援)の表彰式が11日、北九州市小倉北区の小倉井筒屋パステルホールであり、受賞者に賞状などが贈られた。
「酒のかなたへ」で最優秀作に選ばれた尾形牛馬さん(74)=本名尾形和法、熊本市東区=は「下手な小説を書いていると気が重かったが、受賞して、勇気を持って書けるようになった。一昨年、がんで亡くなった妻と喜び合えないのが残念」とあいさつした。
式には九州・沖縄8県と福岡、北九州、熊本3市の計11地区優秀作・次席受賞者のうち16人と、選考委員の作家村田喜代子さんと又吉栄喜さんも出席した。
記念講演は政治学者で熊本県立劇場館長の姜尚中さんが「漱石のことば」と題して行った。「夏目漱石は、近代の人間が自我を持って生きる中で、どれほど孤独に耐えられるのか。『世間』を描くことで近代日本の仕組みまで見通した」と語った。

 

最優秀賞を受賞した尾形さん

「文学カフェin佐賀」を開催

九州文化協会は2月11日、「九州芸術祭文学カフェin佐賀」を佐賀市で開催しました。作家の藤野可織さんと千早茜さんが、九州芸術祭文学賞佐賀県選考委員・草場雅裕さんをコーディネーターに対談しました。会場のエスプラッツホールには約100人の文学ファンが集まりました。2月17日に掲載された西日本新聞の記事を転載して、対談の一端を紹介します。

「純文学は既存の価値観を壊す」 藤野可織さん

「エンタメは社会への問題提起」 千早 茜さん

 藤野可織さんと千早茜さん、同世代の女性作家2人が2月11日、佐賀市であった「九州芸術祭文学カフェin佐賀」で、「作家を志した瞬間~想像から創造へ」をテーマに語り合った。話題は小説を書くようになった経緯から純文学と娯楽小説の違い、創作の訓練法にまで及んだ。
 1980年生まれの藤野さんと79年生まれの千早さん。藤野さんは2006年に「いやしい鳥」で文学界新人賞を、千早さんは08年「魚神」で小説すばる新人賞をそれぞれ受賞し、デビューした。
 作家を志したきっかけについて、藤野さんは「学生時代は美術館の学芸員になりたかったが、大学院の修士論文を書いている最中に、幼い頃から絵本が好きで、自分はお話を書く人になるものだと信じ込んでいたことを思いだし、小説を書き始めた」。千早さんは「幼い頃から日記を付け、国語教師の母親に毎日、添削を受けた。そこから自然な感じで作家を目指した。29歳でデビューすると自分で決め、それまではネタ集めのためにアルバイトをいくつも掛け持ちして働いた」と話した。
 その後、藤野さんは純文学を書き続け、2013年に芥川賞を受賞。千早さんは幻想小説や恋愛小説など幅広くエンターテインメント小説を書き、島清恋愛文学賞などを受賞してきた。
 書く小説のタイプが異なると、編集者との関係も対照的という。千早さんは「エンタメ文学は、次は恋愛ものでとかサスペンスでとか、けっこう要望がある。それをどう料理するかは任せてもらっている」。藤野さんは「純文学は割と自由。どんどん書いて、とは言われるが、自分への駄目出しの連続でなかなか出せない。追い立ててもらって、やっと形になっている」
 創作におけるテーマについて、藤野さんは「既存の価値観を壊すのが純文学。全然違う価値観を提案できる」。一方、千早さんは「エンタメは社会の不条理や虐げられた人の苦しみに主題がいく。問題提起の部分が大きい」と語った。
 「小さい頃からメモ魔」という千早さんが「映画を見ながら情景を文字でスケッチする。映画をいかに文字で書くかを練習している」と話すと、藤野さんも「それは小説を書く上で役に立つ訓練。感情は要らないから、見えたものを見えたまま正確に書き起こすことが大切」と応じた。
(江藤俊哉・西日本新聞文化部)

第47回九州芸術祭文学賞最優秀作に熊本市の尾形牛馬さん「酒のかなたへ」

第47回九州芸術祭文学賞の最優秀作は、熊本市の尾形牛馬(ぎゅうま)さん(74歳)の作品「酒のかなたへ」に決まった。文藝春秋刊「文學界」4月号に掲載される。

最終選考は1月27日東京都内で開かれ、九州(沖縄を含む)の8県と3政令指定都市から選ばれた地区優秀作11編を最終選考委員の作家五木寛之、作家村田喜代子、作家又吉栄喜、文學界編集長武藤旬の4氏が選考した。応募総数は251編。

表彰式は3月11日(土)午後1時から小倉井筒屋パステルホールで一般公開の形式で行い、引き続き同会場で政治学者・姜尚中さんの記念講演「漱石のことば」〈夏目漱石の言葉が僕の癒しだった〉がある。入場は無料。参加者は2月より募集予定。

2月11日(土)開催 九州芸術祭<文学カフェin佐賀>「作家を志した瞬間(とき)」~想像から創造へ~

(公財)九州文化協会は2月11日、佐賀市文化交流プラザ・エスプラッツホールで「九州芸術祭 文学カフェin佐賀」を開催します。藤野可織さんと千早茜さん、二人が「作家を志した瞬間(とき)~想像から創造へ~」と題して語り合います。
日時・申し込みの詳細はこちら

チラシ1チラシ1
文学カフェチラシ(PDF)

日時 2017年2月11日(土)14時~16時(13時30分開場)
会場 佐賀市文化交流プラザ・エスプラッツホール(佐賀市白山2丁目7-1)
定員 200名 ※先着順。事前のお申し込みが必要となります。
入場 無料

♦お申込み♦
往復はがき、またはメールで名前、住所、連絡先の電話を記載してお申し込みください(1月末必着)。
折り返し、整理券または整理番号を返信いたします。
往復はがき 〒840-8570
(郵便番号のみで届きます)
佐賀県文化課文化振興担当 宛て
メール bunka@pref.saga.lg.jp

●主催 (公財)九州文化協会、佐賀県、福岡県、大分県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県、福岡市、北九州市、熊本市
●共催 (公財)佐賀県芸術文化協会、西日本新聞社、福岡文化連盟
●後援 佐賀新聞社

藤野可織さん
1980年京都文学部生まれ。同志社大学卒。同大学院修士課程修了(文学修士)。2008年まで京都市内の出版社でアルバイトをしながら小説を書いていた。06年「いやしい鳥」で文学界新人賞。13年「爪と目」で第149回芥川賞。「爪と目」は3歳の女の子が「あなた」について語るという錯覚を読み手に植え付けることから、ホラー小説と位置づけられた。京都市在住。

千早茜さん
1979年北海道江別市生まれ。立命館大学文学部卒業後、飲食店、医療事務、美術館アルバイトをしながら小説を書いた。美術が好きで、学生時代には自分の絵に詩をつけて個展を開いたことがあったが、詩の評判が高かったことから小説に向かった。09年「魚神」で第37回泉鏡花文学賞。13年「あとかた」で第20回島清恋愛文学賞を受賞した。

コーディネーター草場雅裕さん
九州芸術祭文学賞佐賀県地区選考委員 1959年佐賀県伊万里市生まれ。佐賀県立伊万里商業高校卒業後、横浜市で書店や出版社勤務2002年独立して草場書房を立ち上げ。文芸書を中心に出版。13年から伊万里市に拠点を移し、16年から同賞地区選考委員。